・・・・・2010年度宇宙進化セミナー・・・・・

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*細川 隆史氏(京都大学)

タイトル:初代星の質量降着進化と最終質量
日時: 1月12日(水) 14:00〜
場所: F313号室

アブストラクト:
宇宙初代星は100-1000太陽質量に達する大質量星であると言われているが、 具体的に何太陽質量の星であるかは分かっていない。 これを決めるために、2次元軸対称の輻射流体計算と原始星進化計算 を組み合わせて初代星が質量降着によりどこまで太れるかを計算した。 計算によると、原始星の質量が大きくなると星の紫外光度が急激に大きく なり、円盤の極方向に電離領域が成長していく。 この電離領域の膨張により円盤極側のガスは吹きとばされ、 円盤自身も紫外光にあぶられて次第に蒸発していく。 この輻射フィードバックの効果により原始星への降着率は大幅に 低下する。この結果、星質量が100太陽質量に達する前に降着が 止まってしまう場合が多いことが分かった。

 
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*大西 利和氏(大阪府立大学)

タイトル:巨大分子雲の進化: 銀河系・マゼラン雲の分子雲広域探査から
日時: 11月10日(水) 14:00〜
場所: F313号室

アブストラクト:
銀河の中の星の大部分は、質量が10万太陽質量を超える巨大分子雲の中で形成されると考えられている。銀河の中でどのように巨大分子雲が形成され、その中でどのように星が形成されるかを明らかにすることは、銀河の進化を理解する上で非常に重要である。最近の観測装置により、銀河系や最も近い銀河の一つであるマゼラン雲等の多波長全面観測が急速に進んできた。本セミナーでは、分子ガスの観測を中心にこれらの銀河全域にわたる最近の星間物質研究について紹介する。また、大阪府立大学を中心として進めている1.85mミリ波・サブミリ波望遠鏡計画、また、Early Scieceが始まろうとしているALMAに関しても、上記の視点から述べる。

 
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*西澤 篤志氏(京都大学)

タイトル:重力波によるダークエネルギー探査
日時: 10月6日(水) 14:00〜
場所: F313号室

アブストラクト:
重力波によって天文学を行なうには、重力波観測データからどのように宇宙物理 に関する情報を引き出すかが鍵となる。様々な重力波源の中でも連星系からの重 力波波形は理論的に精密に計算する事が出来、観測された波形から連星の天球上 位置や質量、軌道角運動量等のパラメータを決定する事が出来る。さらに、振幅 から波源までの距離も求める事が出来るので、連星系重力波源は標準音源(Ia型 超新星の標準光源に対応)と呼ばれている。電磁波の観測から赤方偏移も決まれ ば、光度距離と赤方偏移の関係から宇宙膨張を測定する事が可能になる。特に、 次世代のスペース重力波検出器では宇宙論的距離にある多数の中性子星連星が検 出可能となるので、宇宙膨張をこれまでに無い精度で測ることが出来る。今回の セミナーでは、標準音源による距離測定について紹介し、スペース重力波検出器 による宇宙論パラメータの決定について報告する。また、各 z でのハッブルパ ラメータを直接測定する方法についても報告する。

 
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*諏訪 雄大氏(京都大学)

タイトル:重力崩壊型超新星の爆発メカニズムと多次元シミュレーション
日時: 6月23日(水) 14:00〜
場所: F313号室

アブストラクト:
重力崩壊型超新星爆発は大質量星が最期の瞬間に起こす大爆発である。その瞬間的な明るさは母銀河に匹敵するため、古来から多くの観測が なされてきた。しかし、爆発メカニズムは未だ完全には明らかになっていない。標準的なシナリオとして、遅延爆発モデルがある。 これは鉄の光分解などによってエネルギーを失ってしまった衝撃波に、中心部から放射されたニュートリノがエネルギーを注入することで爆発を 起こすモデルである。しかし、詳細な微視的物理を組み込んだ計算でも球対称の仮定のもとでは爆発を再現することが出来ていなかった。
このような状況が近年大きく変わりつつある。昨今の計算機パワーや計算手法の発展により、多次元のシミュレーションが可能になってきた のである。多次元の効果(衝撃波の変形や対流など)はニュートリノ加熱の効率を大きく上げるため、爆発にはよい方向に働くことが予想される。
本セミナーでは、超新星爆発研究の現状を概観したのちに、近年の我々の軸対称輻射流体シミュレーションの結果について紹介する。シミュレーションの 結果、球対称では爆発しない星であっても、軸対称計算では衝撃波は鉄コアの外まで伝搬することが明らかになった。このシミュレーション結果を用いて、 球対称と軸対称におけるニュートリノ加熱の効率の違いや回転の効果について議論する。

 
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*奥住 聡氏(名古屋大学)

タイトル:原始惑星系円盤におけるダストの合体成長と静電反発
日時: 5月12日(水) 14:00〜
場所: F313号室

アブストラクト:
現在の標準的な惑星系形成シナリオ(京都モデル)では、固体天体の形成ははじめにサブミクロンサイズの塵粒子(ダスト)の合体成長を通じて進行するとされる。ダストの合体成長は惑星形成理論において最も解明の進んでいない部分の1つであり、進化経路を決定づける物理プロセスの洗い出しと詳細なモデル化が盛んに行われている。
講演者は、従来のダスト合体成長理論において無視されてきた塵粒子の帯電の影響を調べてきた。電離ガス中に置かれたダストが帯電することはプラズマ物理の分野において良く知られた事実である。一方、原始惑星系円盤は弱く電離していると考えられており、ここでもダストは帯電しているはずである。講演者は、弱電離ガス中でのダストの帯電状態を解析的に扱える理論モデルをはじめて構築し、帯電と静電相互作用の効果を取り入れたダストの合体成長シミュレーションを行った。この結果、惑星形成領域の大部分(1AU~100AU)でダストの合体成長は静電反発によって著しく妨げられることが明らかになった。本講演では、上述の研究結果を紹介し、さらにダストの帯電と円盤内での磁気流体乱流との興味深い関わりについても言及する。

 
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*榎戸輝揚氏(東京大学)

タイトル:超強磁場をもつ高密度天体マグネターからの X 線放射 〜 「すざく」衛星の最新成果 〜
日時: 4月21日(水) 14:00〜
場所: F313号室

アブストラクト:
超新星爆発で残される中性子星は、1E+8 テスラの磁場をもつと考えられているが、近年これより 2-3 桁も磁場が強い高密度天体「マグネター」が存在する観測的な証拠が報告されるようになってきた。いわば、宇宙最強の磁場をもった天体である。これほどに磁場が強くなると、光子が自然に分裂するなどの極限物理が現れると期待され、天文学的な対象としてだけではなく、地上では到達できない基礎物理を探る上でも魅力的な観測対象である。我々は、宇宙 X 線観測衛星「すざく」により、これまで知られている銀河系内の ~15 個ほどのうち、明るい 10 天体について網羅的な観測を行った。その結果、マグネターの広帯域X線スペクトルは、これまで知られていた星表面からの熱放射とおぼしき成分と、極めて硬い光子指数〜1をもち100 keV 近くまで「べき」で伸びる新しい成分を普遍的にもつことがわかった。さらに、両者の強度比を調べることで、天体の年齢に応じたスペクトルの進化があることがわかってきた。この新しくこれらの最新の観測事実と、そこから導かれるマグネターの正体を議論する。

 
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