・・・・・2008年度宇宙進化セミナー・・・・・

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*早崎 公威氏(京都大学)

タイトル:巨大バイナリーブラックホール探査の新方法
日時: 2月18日(水) 14:15〜
場所: F313号室

アブストラクト:

近年、巨大ブラックホールとその母銀河は共に進化してきたと する強力な観測的証拠がいくつか発見された。 このことは、銀河中心のブラックホールの成長は、 銀河の衝突合体によって引き起こされたことを強く示唆している。 したがって、多くの発達した銀河の中心核では、 必然的にバイナリーブラックホール を形成する進化段階が存在するはずである。 しかし、ブラックホール同士の距離が1パーセク以下の バイナリーブラックホールの存在は、観測的に同定されておらず、 また、サブパーセクスケールのバイナリーブラックホールが 合体して単一のブラックホールとなるまでどのように進化 していくかも未だに解決されていない(*注)。
そこで、今回は、

1.「サブ〜マイクロパーセクスケールのBBHをいかに検出するか?」 を、独自の理論的モデルをたてて提案する。 また、2009年5月に打ち上げ予定の全天X線観測衛星MAXIでの BBH探査計画(発案段階)についても簡単に紹介する。

を中心に、もし時間が許せば、

2.1.の理論モデルに基づいて、サブパーセクスケールのBBHs   がマイクロパーセクスケールまでどのように進化していくか調べ、   ラストパーセク(ロスコーン)問題(*注)の解決策を提案する。

もお話します。

*注:二つのブラックホール同士の距離が1パーセク程度から重力波放出 による軌道収縮が可能になるスケールまで収縮するのに、 既存のメカニズム(例えば、星とブラックホールの力学的摩擦) だと宇宙年齢を超えてしまい、宇宙年齢内にブラックホール が合体成長できない、という宇宙物理学上の大きな問題 (オープン問題)の一つ。ラストパーセク(ロスコーン)問題 と呼ばれている。 ----------------------------------------------------------------------
*赤堀卓也氏(筑波大学)

タイトル:衝突銀河団の数値流体シミュレーション: 非平衡電離と2温度状態の研究
日時: 11月19日(水) 14:00〜
場所: F313号室

アブストラクト:

銀河団にはX線を放射している数千万度の高温ガスが付随しているが、 そのガスがいつどこでどうやって加熱されてきたかという加熱史は、 まだ十分には解明されていない。我々は構造形成の中で銀河団同士が 衝突する際の衝撃波加熱に注目しており、その加熱の際に銀河団ガスは 衝突電離平衡や電子-イオン温度平衡から一時的に逸脱する可能性が あることを使って、銀河団ガスの衝撃波加熱を検証しようと研究を進めている。 すでに我々は、衝突銀河団Abell 399/401の連結領域では、Fe xxvの割合が 電離平衡値より10-20%多いことや、電子温度がガス平均温度より数%低い 可能性を、これらの平衡を仮定しないダークマターとガスを含めた 3次元数値流体シミュレーションにより示してきた(Akahori, Yoshikawa 2008)。 そしてこの研究で、我々は連結領域の端には観測ではまだ見つかっていない マッハ1.5-2.0の衝撃波面が存在する可能性を示し、観測される Fe xxiv-xxvとFe xxviとのK輝線強度比は、平衡に比べ数10%ずれている可能性を示した。 また、最近の研究からは、衝突銀河団では特にお互いがすれ違ったのち、 密度の低い外縁部にマッハ2-4程度の衝撃波が伝わるところで、 ガスは電離平衡や温度平衡から数10%ずれることを明らかにしつつある (Akahori, Yoshikawa in prep.)。 本講演では上記の非平衡電離・2温度プラズマ状態について、 数値シミュレーションに基づいた自身 の最近の研究を紹介する。 ----------------------------------------------------------------------
*井上進氏(京都大学)

タイトル:高エネルギー天体で探る宇宙暗黒時代
日時: 10月29日(水) 14:00〜
場所: F313号室

アブストラクト:

ガンマ線バーストやブレーザーなどのガンマ線観測を通じて、 宇宙再電離期のUV背景放射や、微弱な銀河間磁場を探る方法を議論する。 また、ガンマ線バーストを用いて、宇宙で最初の世代の星形成を探る 可能性についても触れる。 ----------------------------------------------------------------------
*野村英子氏(京都大学)

タイトル:原始惑星系円盤中のダスト進化とガス降着流の観測的検証法
日時: 10月15日(水) 14:00〜
場所: F313号室

アブストラクト:

近年Spitzer望遠鏡や地上望遠鏡により、原始惑星系円盤からの 分子輝線の観測や、統計的かつ詳細なダスト連続光の赤外線観測が なされている。また、近い将来運行開始予定のALMAは、円盤からの 分子輝線やダスト連続光の高空間分解能ミリ波・サブミリ波観測を 可能にし、円盤内縁部の惑星形成領域の物理・化学構造を明らかに すると期待される。 ここで、原始惑星系円盤内でダスト粒子は合体成長、円盤赤道面へと 沈殿し、やがて微惑星形成に繋がると考えられる。この円盤内 ダスト進化は、ダスト吸収係数やダスト上の光電加熱率の変化を通じ、 円盤内ダスト・ガスの温度分布に影響を及ぼす。その結果、 円盤からのダスト放射や分子輝線の観測量に影響が現れる。 本講演では、ダスト合体成長方程式の数値計算を行い、さらに 円盤内ダスト・ガス温度分布を求めて、ダスト進化がダスト連続光の 空間分布、および近赤外線領域の水素分子輝線に及ぼす影響について 議論する。 一方で円盤内のガス降着流は、円盤ガス散逸機構の一つであり、 ガス惑星形成や惑星軌道に影響を及ぼす重要な過程である。 本講演ではさらに、非平衡気相化学反応計算を行なうことにより、 ガス降着流が円盤内縁部の化学構造、および分子輝線の観測量へ 及ぼす影響、また、そのALMAでの観測的検証可能性について議論する。 ----------------------------------------------------------------------
*小林史歩氏(Liverpool John Moores University)

タイトル:ガンマ線バーストと磁場
日時: 10月8日(水) 14:00〜
場所: F313号室

アブストラクト:

シンクロトロン放射により、ガンマ線バーストは電磁波を放っていると考えられるが、 その為には、放射領域で強い磁場が必要である。観測からの磁場への制限、関連 した理論モデルについて議論する。 ----------------------------------------------------------------------
*Zdziarski氏(Copernics Astronomical Center)

タイトル:Tev emission from binary
日時: 6月18日(水) 14:00〜
場所: F313号室

アブストラクト:

I will discuss models of the TeV emission from X-ray binaries, discovered in recent years by the HESS and MAGIC telescopes. In the case of PSR B1259-63, LS I +61 303 and LS 5039, the most likely model of the observed persistent emission is interaction of the electron-positron pair wind emitted by a young pulsar with the stellar wind from the high-mass Be/O companion. Cyg X-1 is now the only case of TeV emission from a confirmed accreting binary. I will discuss whether the transient emission observed from this source could originate from the black hole vicinity in spite of photon-photon pair absorption. ----------------------------------------------------------------------
*當真 賢二氏 (国立天文台)

タイトル:γ線バーストの電波偏光観測から相対論的衝撃波における 電子加熱効率に迫る
日時: 6月11日(水) 14:00〜
場所: F313号室

アブストラクト:

γ線バーストとその残光の生成に対する標準的な理論モデルでは、 相対論的速度をもつアウトフロー中で衝撃波が発生しバーストを 作り、そのあとアウトフローが周辺媒質に減速させられることで 衝撃波が発生し残りのエネルギーを残光に転換すると考える (内部・外部衝撃波モデル)。このモデルは広く受け入れられて いるが、それが抱える問題の一つにγ線放射効率問題がある。 γ線放射効率は、観測されたγ線の全エネルギーと数時間後からの 残光観測のモデルフィッティングから得られるアウトフローの 全エネルギーから評価できる。それが大半のイベントについて 50%を超え、これほど高い効率は内部衝撃波モデルでは実現し がたいのである。 この問題を解決する一つの考え方として、外部衝撃波において 電子の加熱効率が低いとするものがある。現在観測されている 残光を作る高温の非熱的電子以外に低温の熱的電子が残っている とすれば、アウトフローの全エネルギーは実際には大きいことに なり、γ線放射効率を下げることができる。低温の熱的電子の 放射は早期の電波観測で調べられるが、現在の技術では難しい。 そこで我々は低温の熱的電子が後期電波残光の偏光に与える影響が 高温の非熱的電子より非常に大きくなることに着目し、それが観測 可能であることを示した。具体的には低温の電子によるファラデー 回転効果によって電波偏光が打ち消される。現在計画中の電波 望遠鏡ALMAで観測可能であり、偏光度が落ちるところの振動数が 決められれば電子の加熱効率に制限を与えることができる。 そこからγ線バーストの全爆発エネルギー、γ線放射効率を再評価 することができる。 ----------------------------------------------------------------------
*町田正博氏(京大)

タイトル:ガス惑星の角運動量の起源について
日時: 5月7日(水) 14:00〜
場所: F313号室

アブストラクト:

 木星や土星などのガス惑星は、太陽と同等の大きな比角運動量を持つ。こ れは、星形成の場合と同様、ガス惑星の形成過程でも回転が進化に重要な 役割を果たすことを示唆している。しかし、ガス惑星の角運動量の獲得過 程は、原始星のそれとは大きく異なっている。原始星の場合、中心星は母 天体となる分子雲から角運動量を獲得する。これに対して、原始ガス惑星 の場合、ケプラー回転する円盤のガスの公転速度差から角運動量を獲得す ると考えられている。しかしながら、原始惑星系円盤からガス惑星へのガ スの降着過程では、中心星の重力の影響や惑星の重力圏近傍で発生する衝 撃波のために、ガスは非常に複雑な振る舞いをする。そのため、ガスの降 着過程を理解するためには、精度の高い数値シミュレーションが必要とな る。
  我々は、3次元多層格子法を用いて、コア・アクリーションモデルの過程の もとで、原始惑星系円盤からガス惑星へのガスの降着過程を計算した。そ の際、特に原始ガス惑星の角運動量の獲得過程に着目した。また、ガス惑 星の進化を初期の低質量の状態から最終段階まで計算することは難しいた め、原始惑星の質量をパラメータとして多数の計算を行った。その後、原 始惑星の質量と円盤から獲得する比角運動量の関係式を導出し、最終的に 原始ガス惑星が獲得しうる角運動量を見積もった。
 計算の結果、形成過程で獲得出来る最大の角運動量は、現在のガス惑星(木 星、土星)の角運動量の約30-50倍程度であることが分かった。また、原始 惑星近傍に形成した非常に薄い円盤のサイズは、現在のガス惑星の規則衛 星の軌道半径とよく一致することが得られた。

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