・・・・・2007年度宇宙進化セミナー・・・・・

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*柳 哲文(大阪市立大学)

タイトル:Gravitational Lensing in a Clumpy Universe

日時: 4月18日(水)午後2:00から

場所: 3階セミナー室


アブストラクト:
我々の宇宙は,数千万光年程度のスケールで粗視化すると,ほぼ一様等方である.一方,数千万光年以下の小さいスケールでは,星や銀河等様々なスケールの非一様性がある.これらの非一様性を定量的に明らかにすることは,観測的宇宙論の重要なテーマの一つである.一方,宇宙に存在する質量のうち,99%以上は電磁波を放射していない.従って,光っているものの分布を調べるだけでは,物質分布の非一様性を知ることはできない.そこで,非一様性観測の手段として,重力レンズ効果が注目されている.重力レンズ効果が,物質分布の観測手段として最も優れているところは,光を発しない暗黒物質の分布を調べられることである.

本研究の目的は重力レンズ効果を用いて,小さなスケール領域での宇宙の非一様性観測の方法を考案することである.特にここではIa型超新星爆発からの光,及びコンパクト天体の連星系からの重力波に対する,重力レンズ効果に着目する.宇宙の物質が全て同じ質量の塊からなるものと近似した宇宙モデルにおいて,数値シミュレーションを用いて,重力レンズ効果が距離−赤方偏移関係に及ぼす影響を調べた.本講演では,重力波を用いて観測される距離の分散が,重力波の波長と塊の質量との間の大小関係に大きく影響されることを示す.又,Ia型超新星爆発の観測において,観測される距離の分散や確率分布から,塊の大きさや密度分布の情報が得られる可能性を示す.

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*三浦 均(京大)


タイトル:衝撃波加熱コンドリュール形成モデル:原始太陽系星雲内部のダスト加熱現象

日時: 4月25日(水)午後2:00から

場所: 3階セミナー室


アブストラクト:
コンドリュールとは、地球に最も多い頻度で落下する石質隕石に含まれるmmサイズの球状珪酸塩鉱物である。これは、原始太陽系星雲に存在したmmサイズの珪酸塩ダストが、なんらかのメカニズムで加熱・融解され、表面張力によって丸くなり、その後急冷・再固化してできたものだと考えられている。しかし、その加熱メカニズムについては、100年以上も前に問題提起がなされてから、いまだに論争中である。これまでにいくつかのコンドリュール形成モデルが提案されているが、重要なのは、実際のコンドリュールに見られる物理的・化学的特徴を説明しうるかどうかである。

我々はこれまで、最も有力なモデルのひとつと考えられている衝撃波加熱モデルに注目し、それが予言するコンドリュールの特徴について理論的に調べてきた。衝撃波加熱モデルとは、原始太陽系星雲内部に生じた衝撃波をガスやダストが通過した直後に生じるダスト加熱過程に基づいたモデルである。衝撃波面を通過したガスは急激に速度変化するが、ダストは通過前の運動状態を維持しようとするため、両者の間に大きな相対速度が生じ、主にガス摩擦によってダストが加熱・融解される。このモデルの特徴として、衝撃波通過に伴って加熱されたガスやダストからの輻射がダスト自身の熱進化に重要な影響を及ぼすことや、強いガス動圧によって融解ダストに流体力学的挙動が引き起こされること、が挙げられる。これらの影響は、形成されるコンドリュールの物理的・化学的特徴に大きな影響を及ぼし得るため、定量的に調べることによってモデルの検証に繋がる。

講演では、これまで我々が取り組んできた理論的研究や、実際に見られるコンドリュールの特徴との比較について説明したい。また、それを通じて、原始太陽系星雲衝撃波によるダストの力学的・熱力学的進化シナリオについて共に理解を深めたい。

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*須佐 元(甲南大学)

タイトル:初代星の輻射フィードバックについて

日時: 5月24日(木)午後2:00から

場所: 6階会議室


アブストラクト:
現在の標準的な理論では、宇宙最初期に誕生した星は非常に大質量であったと考えられている。その結果、星からは大量に紫外線・極紫外線が放射され、周囲の分子を解離し、水素原子を電離する。このような輻射によるミクロなプロセスは周囲のガスの物理状態を大きく変え、そこでの更なる形成を阻害し、場合によっては促進する。このセミナーでは、最初期の星からの放射にさらされた近傍の星形成領域での星形成の様子を、輻射流体力学の手法を用いて調べているので、それに関して解説する予定である。

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*高橋慶太郎(京大基研)

タイトル:重力波と磁場 -宇宙論的2次摂動による生成-
日時: 6月13日(水)午後2:00から



場所: 3階セミナー室


アブストラクト:
宇宙背景放射や大規模構造の観測は近年目覚ましく発展し、「インフレーション+宇宙論的摂動論」という初期宇宙の標準理論を裏付けた。これまでの線型摂動論を拡張して非線型な効果を取り入れると、重力波や磁場の古典的生成という線型とは質的に異なる現象が現れる。このような重力波や磁場はすでに観測されている密度揺らぎから生成されるため、その存在は理論的に保証されるものである。

このセミナーでは宇宙論的摂動論の2次の効果による重力波・磁場の生成とその宇宙論的な影響について議論する。特に磁場は銀河や銀河団といった天体に付随する磁場の種として働く可能性や、初期宇宙を探るツールとなる可能性があり興味深い。

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*葛西真寿(弘前大)

タイトル:加速膨張? ダークエネルギー?? 非一様宇宙!
日時: 6月27日(水)午後3:00から


場所: 3階セミナー室


アブストラクト:
最近の超新星等の観測から、宇宙は見かけ上,加速膨張していることが明らかになった。宇宙原理から導かれるフリードマンモデルを仮定する限り、このことはダークエネルギーの存在を意味する。

一方、ダークエネルギーを導入せずに、非一様宇宙モデルによって観測結果を説明しようとする試みも行われてきたが、ほとんどは単純化された特定のtoy modelに依存した議論であった。

本講演では、時空の非一様性の効果を特定の宇宙モデルに依存せずに取り扱う手法について述べ、ダークエネルギーの代替としての非一様性の効果について議論する。


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*佐野孝好(レーザー研)

タイトル:磁気乱流と惑星形成
日時: 7月4日(水)午後2:00から


場所: 3階セミナー室


アブストラクト:
惑星形成の現場である原始惑星系円盤は、磁気回転不安定によって磁気乱流状態にあると考えられている。従来の惑星形成シナリオでは、乱流が減衰した後、固体微粒子(ダスト)が成長・沈殿し惑星が形成されると考えられていた。しかし、ダストが進化した後でも磁気回転不安定は成長できるため、乱流中での惑星形成過程を新たに考慮する必要がある。本講演では、原始惑星系円盤における磁気乱流の性質や乱流中でのダストの集積現象について、数値シミュレーションの結果を中心に議論する。
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*田中貴浩(京大)

タイトル:相対論的宇宙論
日時: 9月22、23、24日


場所: E210


アブストラクト:
インフレーションモデルはWMAP衛星などの近年の観測の進展にともない、その基礎を固めつつある。一般相対論の宇宙論への応用としてインフレーションは大きな成功をおさめようとしている。本講義前半ではまずインフレーションモデルの基礎を解説する。一方で、一般相対論の宇宙論への応用の新たな展開として、近年高次元時空中の4次元の膜に我々が住んでいると考えるモデルが注目を集め、理解が大きく進んできている。そこで、後半ではこのブレーンワールドについての基礎を講義する。


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*米原厚憲(京産大)

タイトル:クェーサーの狭輝線放射領域と宇宙の蜃気楼
日時: 9月19日(水)午後2:00から


場所: 3階セミナー室


アブストラクト:
 クェーサーやセイファート銀河など、活動銀河と呼ばれる天体は、巨大ブラックホールを中心に、様々なスケール・性質を持つ領域から構成されていると考えられている。それらの中には、降着円盤によって照らされることで、構成元素が励起され輝線を放射する領域が存在する。中でも、線幅が狭く比較的拡がった領域からなる狭輝線放射領域は、近傍の天体の場合、直接その空間構造を分解できる程の拡がりを持つ。この拡がりが、中心光度などとどのような関係にあるのかを知ることは、単に狭輝線放射領域の構造を知るためだけでなく、活動銀河の構造や進化を知るための一助となるはずであり、これまでいくつかの系統的な観測がなされてきた。
 しかし遠方の天体、特にクェーサーは、見かけの大きさが小さいため、この拡がりを知ることは困難である。そのため、クェーサーとセイファート銀河で観測的に示唆される、光度と領域の拡がりの系統的な違いが有意なものであるか否かについて、はっきりとした結論は出ていない状況である。
 そこで宇宙の蜃気楼とも呼べる重力レンズ現象に着目した。この現象が起きると、遠方の天体の像が引きのばされることが知られており、その効果をうまく利用すれば、狭輝線放射領域の拡がりを測定することが可能となる。ここでは、銀河による重力レンズ現象を主眼に置き、まずこの独自の方法の原理について紹介する。そして、既存の観測データや今後期待される観測精度を念頭に置いた上で、どの程度の結果が期待されるのかについても議論する。
 実際に、現状において現実的な観測精度で得られたデータを解析することで、クェーサーとセイファート銀河の狭輝線放射領域に有意な違いがあるかどうかを区別することが可能であることが明らかになった。それに加え、その副産物として、重力レンズ現象を用いて銀河の密度プロファイルの推定も可能であることが分かった。これらの結果を元に、現在積極的に観測提案を行っているところである。


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*福山武志(立命館)

タイトル:Cosmic structures via Bose Einstein condensation and its collapse
日時: 10月11日(木)午後2:00から


場所: 6階会議室


アブストラクト:
We develop our novel model of cosmology based on the Bose-Einstein condensation. This model unifies the Dark Energy and the Dark Matter, and predicts multiple collapse of condensation, followed by the final acceleration regime of cosmic expansion. We first explore the generality of this model, especially the constraints on the boson mass and condensation conditions. We further argue the robustness of this model over the wide range of parameters of mass, self coupling constant and the condensation rate. Then the dynamics of BEC collapse and the preferred scale of the collapse are studied. Finally, we describe possible observational tests of our model, especially, the periodicity of the collapses and the gravitational wave associated with them.


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*竹内拓(神戸大)

タイトル:惑星形成期におけるダストの移動について
日時: 11月7日(水)午後2:00から


場所: 3階セミナー室



アブストラクト:
惑星形成の後期には、原始惑星系円盤は光学的に薄くなり、中心星の光によって円盤内がくまなく照らされるようになると思われる。すると、円盤中のダストに中心星の光が直接当たり、さらに円盤ガスと相互作用することにより、ダストは円盤内を移動し、ある特定の領域にたまる。このようにしてできた円盤構造は、惑星などの重力によって形成された円盤構造と区別する必要がある。このダストの移動による円盤の自発的構造形成について、最近提唱された光泳動の話題も交えてお話したい。

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