・・・・・2004年度宇宙進化セミナー・・・・・

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*4月28日(水) 長滝重博 (京大基研)

タイトル: High-Energy Neutrinos Produced by Interactions of
Relativistic Protons in Shocked Pulsar Winds

アブストラクト:
若い中性子星からのwindがsupernova remnantによって
閉じ込められている系を考え、wind中にはprotonが混在
していると考え、pp反応によるニュートリノ、γ線の
emissivityを評価した。銀河に於ける、高エネルギー
ニュートリノ、および高エネルギーγ線の起源の一つと
して若い中性子星が有力であると結論された。

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*5月21日(金) 井上太郎 (近大)

タイトル:Extended source effects in substructure lensing

アブストラクト:
サブミリ波や電波の干渉計で観測した超高解像度マップを用いて、CDMクラン
プや大質量BHの質量、距離、分布を測定する方法についてのお話です。

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*5月26日(水)鈴木 建(京大天体核)

タイトル:宇宙プラズマの波加熱 -太陽コロナの場合と銀河団の場合-

アブストラクト:
恒星から銀河団に至る様々な大きさの天体において、高温のプラズマが存在す
ることが知られていっる。私は、宇宙プラズマでの加熱、加速を担う過程の1
つである、波動の減衰の研究を行なってきた。本セミナーでは、まず太陽コロナ
における、波動減衰による加熱、加速過程を議論する。特に、高速太陽風と
低速太陽風という、2種類の太陽風の吹き分けを、異なったモードの波動減衰
という観点から説明する。そして、波動減衰を銀河団プラズマの加熱に応用し、
波動加熱によりクーリングフローは効果的に抑制され得ることを示します。

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*6月 9日(水) 長島雅裕(京大天体核)

タイトル:化学組成から探る銀河の階層的形成過程

アブストラクト:
鉄や酸素などの重元素は超新星爆発により作られるが、Ia型とII型超新星では
星形成から爆発までの寿命が異なり、また放出される元素組成パターンも異な
る。従って重元素量やその組成比には銀河形成のタイムスケールが反映され、
これらを調べることにより銀河形成についての重要な手がかりを得ることが出
来る。ここでは標準的なCDM宇宙モデルに基づく階層的銀河形成モデルを用い、
(1)我々の銀河系内の星、及び(2)銀河団ガス、のそれぞれについて重元素組成
の解析を行い、銀河形成の物理過程にどのような制限が得られるかを示す。

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*6月18日(金)吉田直紀(名大A研)

タイトル:宇宙創生はじめの3億年

アブストラクト:
宇宙の構造形成についての研究はこれまで、銀河サーベイで観測されるような
現在の時点での大きな構造の形成・進化についてのものが主流であった。
しかし近年、理論・観測ともに、研究はより高赤方偏移、つまり宇宙が若かっ
た頃の話題へとひろがりつつある。昨年発表された WMAP衛星の観測結果の一つ
である早期再電離の発見も、宇宙の構造形成が非常に早い段階から進んでいた
ことを強く示唆している。セミナーでは我々の研究グループがおこなった宇宙
の初期構造の形成と初代天体による再電離の数値シミュレーションの最新の結
果を発表します。さらに、重元素の分布、赤外背景放射等についても議論する
予定です。

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*6月30日(水)加藤成晃(京大基研)

タイトル:Formation of Magnetic-Tower Jets in Magnetohydrodynamic Accretion Flows

アブストラクト:
X線連星系や活動銀河中心のブラックホール候補天体は、激しい時間変動を伴
う極めて高エネルギーに到る幅広い波長域での放射を示す。これは、ブラック
ホールの強い重力に引き込まれつつある降着流の中で、磁場・物質・放射が電
磁相互作用によって空間的にも時間的にも入り乱れ、重力エネルギーが転換し
た結果であると考えられる。また、ブラックホールに落ち込むガスの一部は、
相対論的ジェットという形で放出する。この宇宙ジェットの噴出メカニズムの
謎は、観測でその詳細が明らかになるにつれ、噴出・コリメーション・加速の
メカニズムの理論的解明が鮮明な課題となってきた。
近年、降着円盤内部で磁気不安定性が成長し、重力エネルギーが磁気エネルギー
に転換した結果、磁気乱流が励起されて角運動量輸送効率を高めることが明ら
かになった。以後、磁場がブラックホール降着流や宇宙ジェットのダイナミッ
クスを理解する鍵であるという認識が広がり、世界各地で磁気流体力学(MH
D)研究が進められている。しかし、これまでの研究は、無限に広がる大局磁
場に貫かれた円盤から噴出するMHDジェットか、局所磁場が埋め込まれた降
着円盤自体に焦点を絞るかのどちらかであると云っていい。ところが、肝心の
大局磁場の起源については未解決であり、局所磁場を持つ円盤からのジェット
の形成の可否は明確にされていない。そこで、私は、大局磁場が無くても、円
盤内部で生成・増幅された局所磁場によって噴出する、新しいタイプのMHD
ジェットの研究に着手した。
ブラックホール周囲にある磁気円盤の3次元MHDシミュレーションの結果、
降着流に埋め込まれた弱い子午面(ポロイダル)磁場が、差動回転と磁気回転不
安定性により、ポロイダル磁場が引き伸ばされて方位角方向(トロイダル)磁場
を作り、そのトロイダル磁場がぎりぎり巻きに蓄積される。すると、磁気圧に
よってトロイダル磁場がバネのように弾けて、磁気タワー(Magnetic-Tower)を
形成した。即ち、大局磁場を仮定する事無く、ジェットが噴出する事が分かっ
た。これを磁気タワー型宇宙ジェットと呼んでいる。今回、この磁気タワー型
宇宙ジェットの研究成果について紹介する。

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*7月 7日(水) 戸谷友則(京大宇物)

タイトル:暗黒物質の起源に迫る

アブストラクト:
暗黒物質に関する最近の私の研究を二つ紹介したい.
暗黒物質で最も有力とされている候補は素粒子の超対称性理論から予言される
ニュートラリーノである.ニュートラリーノが対消滅するとガンマ線などが放
出されるため,銀河中心などからのガンマ線探索などが行われている.一方で
最近,銀河団の分野で問題となっているのが「クーリングフロー問題」で,銀
河団中心の高温ガスが強力なX線で熱エネルギーを失っているにもかかわらず
冷却の兆候がなく,拮抗する未知の加熱源が必要であるというものである.そ
こで,銀河団中心の超巨大ブラックホール形成で暗黒物質の密度が高くなった
コアで起きるニュートラリーノの対消滅が加熱源ではないかという新しい仮説
を提案する.将来のガンマ線観測などの可能性も議論する.
暗黒物質が太陽質量以上のコンパクト天体,MACHOs であるという可能性も,
MACHOs の質量範囲によってはまだ残されている.我々がすばる望遠鏡を用い
て行っているマイクロレンズによる MACHOs 探索についてお話する.また,こ
の観測の副産物として得られた,超新星や AGN などの変動天体に関する最新
の成果についても時間の許す限り報告したい.

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*7月14日(水)岩室史英(京大宇物)

タイトル:FeII/MgII 輝線比で探る QSO の星生成史

アブストラクト:
星生成後 TypeII 超新星で速やかに生成されるマグネシウムに対し、
鉄は主に TypeI 超新星で生成されるため、星生成率に依存しない
この時間差を利用して Initial burst からの経過時間をある程度
推定することが可能である。
本セミナーでは、すばる望遠鏡の OHS/CISCO で観測された
4.4 < z < 6.3 QSO 17天体と SDSS DR1 QSO 11,000天体などを合わせた
結果から、QSO の FeII/MgII 輝線比の進化とそれから推定される
Fe/Mg アバンダンス比を通して QSO 生成史について考察する。

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*9月15日(水)川勝 望(SISSA, Italy)

タイトル:銀河中心の巨大ブラックホール形成:〜降着説か合体説か?〜

アブストラクト:
巨大ブラックホールは、これまで活動銀河中心核のモデルとして
考えられてきたが、最近の観測から活動性を示さない通常の銀河の
中心にも次々と巨大ブラックホールの証拠が見つかってきている。
さらに、その巨大ブラックホール質量は銀河バルジの質量に比例し、
その0.2%程度であるという関係が報告されている。
 一方で、巨大ブラックホール形成問題においてはガスの持つ
角運動量をどのように逃がすかという問題が本質的である。
特に、上述の相関を説明するためには巨大ブラックホール形成と
銀河バルジ形成を結びつける角運動量輸送メカニズムの存在が
必要不可欠である。
 この問題を解決するために、我々は銀河内の星からの輻射が
引き起こす相対論的な輻射抵抗とこれによる角運動量輸送に注目
してきた。本セミナーでは、この輻射抵抗モデルに基き、
ブラックホール−バルジ質量比の起源、またブラックホール質量が
銀河の円盤成分でなくバルジ成分とのみ相関する物理的な理由
について紹介する。
最後に、諸説ある巨大ブラックホール形成シナリオ、大きく2つに
分けると降着説か合体説か、を区別するためには
どのような物理量に注目すれば良いのかについても議論する。

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*10月1日(金)瀬戸 治(National Chiao Tung Univ.)

タイトル:Dark matter in brane cosmology

アブストラクト:
ダークマター粒子の熱的残存量は、その粒子の対消滅断面積及び
基礎とする宇宙モデルに依存する。Non-standard cosmology の例と
して近年注目を集めている Brane cosmology を取り上げ、その場合、
与えられた対消滅断面積に対してダークマターの残存量が増大する
ことを紹介する。また、ダークマター候補として現在有望視されている
ニュートラリーノについて調べ、そこから得られる帰結について議論する。

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*10月13日(水)細川 隆史 (京大基研)

タイトル:電離、解離領域の膨張と誘発的星形成

アブストラクト:
大質量星が出すUV光は周囲の分子雲を電離又は解離して星形成を阻害する
だけでなく、むしろ衝撃波を作って分子ガスを掃き集め、次の星形成を
誘発するというシナリオが昔から議論されてきた。本セミナーでは、
輻射流体の数値計算を用いて、大質量星の周りに伝播する電離、解離領域、
衝撃波、ガスシェル等の動的な進化を考察し、実際に分子ガスが電離領域
外縁部に掃き集められることを示す。また、計算をシェルの分裂条件、
観測例等と比較して議論する。

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*11月10日(水)西條 統之(京大天体核)

タイトル:相対論的回転星の動的不安定性

アブストラクト:
星が十分に高速回転していると,星の動的あるいは静的な不安定性が
星の軸対称性を破壊し,かなり強い準周期的な重力波を放出すること
が知られている.星の動的不安定性の成長時間は系の流体動力学の
時間スケールで決定されるため,星の動的不安定性を研究するには
非線形流体動力学の数値シミュレーションを必要とする.
本セミナーでは重力波源としての星の動的な不安定性,および
数値相対論の枠組みを概説したのち,相対論的重力が星の動的な
不安定性を増長させることを議論する.さらに重力崩壊する星において,
星の動的な不安定性が重力波放出に果たす役割を
角運動量輸送の観点から議論する.

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*11月18日(木)中尾 憲一 (大阪市大)

タイトル:Black-string formation in our world

アブストラクト:
近年勢力的に研究されているブレーンワールド・モデルは,古典論的な重力
相互作用が 0.1mm以下で高次元的な性質を持ちうるという非常に興味深い性
質を持っている.この性質によって,無限に長い質量分布でも,十分細けれ
ば,無限に長い事象の地平線を持つブラックストリングが形成される.これ
はもっともらしい物質を仮定する限り,4次元時空の一般相対論ではありえな
いブレーンワールド・モデルの際だった特徴の一つである.このセミナーで
は,ブレーンワールド・モデルにおけるタイプIの宇宙ひもの衝突・合体に
よって誘発されるブラックストリング形成の可能性と,その観測可能性につ
いて議論する.

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*11月24日(水)磯部 洋明 (京大花山)

タイトル:太陽フレアの観測と数値シミュレーションによる 磁気リコネクションの研究

アブストラクト:
磁気リコネクションとは、磁力線のつなぎかわりによるトポロジーの変化と、
それに伴う磁気流体衝撃波を通じて、磁場のエネルギーをプラズマの熱・運動
エネルギーに変換する物理過程であり、太陽・天体コロナ、地球磁気圏、
実験室プラズマなどあらゆる磁気プラズマに共通かつ重要な現象である。
磁場のグローバルな構造の時間変化を比較的詳細に追うことができる太陽
大気の観測は、磁気リコネクションのようなプラズマの基礎物理過程を
調べるのにも有効である。セミナーではまず磁気リコネクションと太陽フレア
の基礎をレビューした後、太陽フレアの観測に基づく磁気リコネクションの
最近の研究例を紹介する。また、超大型計算機・地球シミュレータを利用した、
太陽浮上磁場と磁気リコネクションの3次元磁気流体シミュレーション
の結果も紹介する。

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*1月19日(水)野村 英子 (神戸大)

タイトル:原始惑星系円盤からの水素分子輝線

アブストラクト:
原始惑星系円盤のガス質量及びその時間進化は、惑星系形成に影響する重要な
物理量である。一方最近の近・中間赤外線、紫外線観測は、円盤ガス質量を最
も確実にトレースする水素分子遷移線の観測を可能にしつつある。
本セミナーでは、円盤のガス温度分布、水素分子各エネルギー準位の停在密度
の詳細な数値計算を用い、円盤中の水素分子の励起機構及び輝線の観測可能性
について考察する。さらに、原始惑星系円盤内ダストの時間進化(成長・赤道面
への沈殿)が水素分子輝線へ及ぼす影響についても議論する。


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*1月26日(水)野口 晃一 (Rice Univ.)

タイトル:Radiative Effect on Particle Acceleration
via Relativistic Electromagnetic Expansion

アブストラクト:
pulser、blazer、γray-burstやブラックホール等において、非等温な相対論的
粒子加速が観測されているが、その起原は今だに解明されていない。近年、
一つの可能性としてPonderomotive Forceによって、高エネルギー粒子を直接
加速するDiamagnetic Relativistic Pulse Accelerator(DRPA)と呼ばれる
加速過程が提唱された。我々は自己無撞着な制動放射を含めた2-1/2次元の
電子−陽電子プラズマのシミュレーションを Particle-in-Cell(PIC)コードを
用いて行い、 一度粒子エネルギーに変換された 低周波の電磁場エネルギーが
制動放射によって高周波の電磁場に変換されることを確認した。本セミナーでは、
まずDRPAの原理と制動放射をどのようにPICコードに導入するかを示し、その結果
観測される放射の強度の時間変化、偏光度及び角度依存性について議論する。

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*3月2日(水)岡田 祐 (東大牧島研)

タイトル:球状星団からの広がったX線放射および
銀河ハローとの相互作用の観測的研究

アブストラクト:
球状星団の系統的なX線観測によって、星団の運動方向に起因した広がったX線
放射が数例検出された。これは銀河ハローと星団ガスとの相互作用によって
bow shockが形成され、そのショック面での加熱/加速による放射と解釈できる。
さらに、いくつかの星団からは、電波で対応天体が発見され、粒子加速起因の
現象と考えられる。その放射メカニズムはシンクロトロン放射、逆コンプトン
放射では説明できず、非熱的制動放射の可能性が高い。講演では観測の概要、
熱的/非熱的放射の起源についての議論を紹介する。

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*3月9日(水)浅田 秀樹 (弘前大)

タイトル:Solving a long-standing problem since the Kepler's age
--- Discovery of Formula for Determining Parameters of Binaries

アブストラクト:
17世紀はじめケプラーが太陽まわりの惑星運動に関する法則を発見した。
現在に到るまで、2次元の天球面上の位置観測から、太陽系以外での2体系
(連星や系外惑星を伴う恒星)の3次元空間内の真の軌道要素を決定するため
の複雑な非線形連立方程式系を解析的に解くのは、不可能だと信じられてい
た。特に、いわゆるケプラーの方程式が超越的なので、数値的に解かざるを
得ないというのが、これまでの常識であった。
しかし、今回の「解析的な公式」の発見は、その天文学の常識を覆す。
発見した公式の利点は次の2点である。
[1]データ解析を高速化できる。
[2]1周期未満の軌道の一部の観測だけの場合にも適用可能である。
例えば、10年以上の長周期の系外惑星検出に役立つ。
従って、国立天文台のVERA観測やJASMINE計画、そして、SIM(米)、GAIA(欧)
といった位置天文観測衛星にとっても、今回の公式は極めて有用である。

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